先日、Mashable(マッシャブル)に投稿されていた、WordPress Direct(ワードプレス・ディレクト)と言うツールに関するエントリが、大きな注目を集めていた。このサービスを“何でも揃うスパムブログ・エンジン”と呼ぶコメンターもいるが、このサービスを使ったことがあると主張するコメンターは、“自分で綴った長文のエントリを投稿するサイクルに、たまに新しいエントリを加える手段として、優れている”と述べていた。
現実として、ワードプレス・ディレクトのようなツールは、徐々にブロゴスフィアに浸透しつつある。オープンソースの開発には副作用が付きものであり、この類のツールに関しては、大半のユーザーはライセンスを利用し、製品を健全な方法で拡張していくだろう。しかし、非倫理的な方法を用いるユーザーが、必ず現れるのだ。オープンソースに関して異議を唱えるつもりはないが、ワードプレス・ディレクトのようなツールが増えており、中には“メンテナンスを必要としない”ブログを提供する代わりに、高額な月額使用料を要求するサービスも存在する。
しかし、そもそも、ワードプレス・ディレクトとは、一体何をするのだろうか?そして、スパムツールなのだろうか?簡単な答えは見当たらない。スパムの特徴、そして、スパムの定義がコロコロと変わるため、さらに答えが複雑化している。それでも、ワードプレス・ディレクトのような製品は、潜在的に危険な利用方法を抱えており、彼らの宣伝を参考にすると、意図的に悪用されてしまう可能性は高いだろう。
利用する人に左右されるツール
まず第一に、ワードプレス・ディレクトは、ワードプレスのインストーラであり、ワードプレスを自分のサーバーまたは彼らのサーバーに簡単にインストールことが出来る。データベースを設定する必要もなければ、コアファイルをインストールする必要もなく、パーマリンクを修正したり、テーマを加える必要もない。すべて、ワードプレス・ディレクトが作業を肩代わりしてくれるのだ。
しかし、ワードプレスをインストールするアプリケーションは珍しくもなんともない。インストールを最適化するアプリは少ないが、“ワンクリック”でワードプレスをインストールする手法を用いているサービスは多く、Fantastico(ファンタスティコ)が利用されているケースも目立つ。さらに、このようなインストールは、通常、最新版を利用するが、ワードプレス・ディレクトは、バージョン2.5.xにこだわっているようだ。
しかし、問題視されているのは、インストールではなく、搭載されているツールである。ワードプレス・ディレクトは、Yahoo! Answers(ヤフー!アンサーズ)やYouTube(ユーチューブ)、さらには、その他のRSSフィードから、コンテンツを直接フィードにインポートすることが出来るツールも備えているのだ。
ワードプレス・ディレクトのスタッフチームは、「作成したブログの運営者=編集者」と宣伝しているが、実際には、自動的に配信するように設定することも可能であり、各種の情報源からコンテンツが根こそぎ刈り取られ、編集や作業を全く行わずに再び配信することが出来てしまうのだ。Adsense(アドセンス)の広告を簡単にブログに挿入することが出来るため、このツールを使って、簡単にスパムブログを作れてしまうことになる。
多くのブロガーが、このように悪用されてしまうのではないかと、懸念を抱いているのだ。
ワードプレス・ディレクトのリアクション
マッシャブルのエントリに、同社の代表として、マーティー・ロズマニス氏が以下のようなコメントを残している:
“コンテンツを再配信する場合は、適切に情報源を明示する必要があり、私達のサービスは、その作業を円滑化しています。さらに、スパム動画等がブログを覆い尽くすことがないように、エントリを投稿する前にレビューする作業も後押ししています。
私達のサービスは、ユーザーのブログの大半はホスティングしていません。ホスティングしているのはユーザー自身です。もしユーザーがブログをスパム化し、問題を起こしているなら、私達はそのユーザーを問題視し、最終的には、彼らが不利益を被ることになるでしょう”
さらに同氏は以下のように述べている:
“このコメントを読んでいるコンテンツのクリエイターの方々に伝えたいことがあります — ユーチューブや「ユーザー生成」タイプのコンテンツサイトやezine等の記事サービスにコンテンツを投稿していない場合は、私達のサービスがコンテンツを見つけることはありません。コンテンツを見つけるために、適当にサイトをスクレイプしているわけではありません。APIを利用し、サイトの方針に合うように、コンテンツを再配信しているのです。私達は、これらのサービスが提供し、ブロガー達が自ら実行しているエンベッドプロセスを自動化しています。”
しかし、このソフトウェアを実際に試してみると、彼らの言い分が、いささか不正確だということが判明した。
まず、私が作成したテスト用の「ブログ」は、ヤフー・アンサーズのコンテンツを利用していたが、コンテンツの情報源を明示することもなければ、ソースへのリンクも掲載されることもなかった。さらに、オリジナルの質問がブログのエントリとして投稿され、返信はコメントとして投稿されるため、混乱が生じてしまった。情報源を明示する手段を探したが、見つけることは出来なかった。(注記:検索エンジンにインデックスされたくないため、このブログは既に削除している)
次に、同社は“ユーザー生成型”のサイトのみからコンテンツを引っ張ると主張していたが、マーケティング資料には、RSSフィードからコンテンツを得る方法も紹介されており、実際に試してみると、かなり簡単に実行することが出来た。どのようにライセンスが供与されているかに関わらず、あらゆるブログが、ユーザーの決断一つで、これらのサイトに勝手に再利用される可能性があるのだ。
最後に、このツールを、動画や関連するエントリを自動的に探すために利用することも出来るが、この機能を提供するサービスは既に存在する。さらに、このツールをそのような用途で用いるには、ハイレベルな編集および制作作業が必要になるが(例:記事を引用したり、リンクを加える)、自動化しても時間の節約にはならない。
このサービスをスパム以外の目的で利用するなら、その目的にもっとマッチするサービスを利用した方がいいだろう。
朗報
幸いにも、ワードプレス・ディレクトは、スパムツールとしては質が低い。一ヶ月で150ドル近くの料金を支払う必要がある、最高レベルのメンバーシップ・アカウントを取得しなければ、開設できるサイトの数は限られている(最高レベルのメンバーは100サイト開設することが可能)。また、スパムブログのネットワークのサイズを考えれば、この数は、たいしたことはない。各ブログから1ドルの収益を上げたところで、手元に残る金額は限られている。このツールよりも遥かに多くのサイトを、安価な料金で開設できるサービスは、存在するのだ。
やはり、もっと知名度の高い他のサービスと比べれば、ワードプレス・ディレクトをそこまで恐れる必要はないと私は思う。ネットワークのサイズが比較的小規模である事実に加え、RSSフィードを加える作業は自分で行わなければならないのだ。
ワードプレス・ディレクトの最も有効な用途は、スパムに関連しているものの、そこまで恐れる必要はないだろう。
結論
ワードプレス・ディレクトのような製品の売り込みには、私は常に注目している。フロントページでは、“トピック固有の動画、オーディオ、そして、記事を探し出し、自動的にサイトに組み込み、オリジナリティをビジターに楽しんでもらえる”と約束しており、“何回かボタンをクリックするだけで、ワードプレス・ディレクトが、自分の好みに合わせたペースで自動的にアップデートしてくれる”と謳っている。
大半のブロガーは、本当なら出来すぎであり、(認めているかどうかは別として)多くのスパムブログ・アプリが、製品を宣伝する際に用いる文句だと、一瞬で気づくはずだ。
ワードプレス・ディレクトは、重大な問題のある利用方法を抱えているツールなのだろうか?それとも限られた正当な利用方法を抱えた問題のあるツールなのだろうか?微妙なところだが、宣伝文句を読む限りでは、後者に当てはまるだろう。
しかし、コメント欄で、ロズマニス氏は、“宣伝文句が、‘楽にする’ことを強調し過ぎていることは、事実であり、アップデートする必要があるでしょう。私達のサービスを正しく表現しているとは思えません”と話している。恐らく、宣伝文句が集めている関心、そして、私を含めた、ブロガー達の、このサービスに対する感情を理解しているのだろう。
しかし、たとえ宣伝文句がなくても、このツール自体が、問題のある利用方法を抱え、一筋縄ではいかない判断を下していることは事実である。意図的なのか、あるいは、単なるミスなのかは、クリエイターに訊かなければ分からない。
ライター紹介: ジョナサン・ベイリーは盗用、コンテンツ盗作、そしてウェブの著作権問題をテーマに取り上げ、Plagiarism Today(プレジャリズム・トゥデイ)でブログを書いている。ジョナサンはコンテンツ盗作問題に対応するウェブマスターが正確な情報を集め、この変化の激しい分野で取り残されないようにこのブログを2005年に始めた。それ以来、コンサルティングサービスをウェブマスターや企業に提供し、彼らが現実的なコンテンツ保護戦略を考案できるように、そして効果的な著作権ポリシーを策定できるように支援している。ジョナサンは弁護士ではなく、彼が提供している情報も法的なアドバイスとして捉えるべきではない。
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