今週、英国のTVシリーズ、Dr. Who(ドクター・フー)のファンサイトを運営するファンのもとにBBCから使用停止を求める文書が届き、サイトの一部を強制的に削除されることになった。しかし、マズマタズ(当該サイトのオーナー)は、YouTube(ユーチューブ)に動画を掲載していたわけでもなく、海賊版のDVDを作っていたわけでもない。彼は、他のファンが自分でドクター・フーのキャラクターを作ることができるように、ニットのパターンを投稿していたのだ。
J.K. ローリングが、ファンを訴えた件も同じ部類に入り、多くの注目を集めた。彼女が、訴えたのは、Harry Potter Lexicon(ハリー・ポッター・レキシコン)サイトのオーナーであり、ハリー・ポッター・シリーズの情報を使った書籍の出版を差し止めることが目的であった。
上述の2件は、クリエイターとファンが、著作権に関して衝突した問題の氷山の一角でしかない。インターネットの登場により、ファンがサイトを作ることが出来るようになってからというもの、著作権の保有者は、越えてはいけない線をどこに引けばいいのか苦悩し、ファンサイトのオーナーは、その線がどこにあるのか、なかなか理解することが出来ないでいる。
それでは、このようなブロガーやファンサイトのクリエイター達は、それぞれの憧れの存在の逆鱗に触れないようにするには、どうすればいいのだろうか?また、著作権の保有者側は、ファンとの不要な衝突を回避するには、どうすればいいのだろうか?不幸にも、著作権法は、この領域では役に立たない。その代わりに、この非常に複雑な問題を誠実な態度で解決しようとする姿勢が重要になってくる。
ファンサイトの問題点
ファンサイトは、その性質上、それぞれが忠誠を誓うアーティスト達の知的財産を利用することになる。商標登録された名前/ロゴであれ、著作権保護されたコンテンツであれ、オリジナルの作品を全く使わずにファンサイトを運営するのは不可能に近い。
問題は、オリジナル作品の利用が時折、公正利用の範疇を越え、著作権を侵害してしまうことだ。多くのファンが、人気シリーズのフィクションを作ったり、作品のタイトルを含むドメインを購入したり、オリジナルの作品を利用してサイトを構築したりしているが、これらのアクティビティは、著作権の侵害と見なされることがある。
人気のあるファン・コミュニティの成長を妨げたくない場合、著作権の保有者は、通常、これらの侵害行為に対して大目に見る。World of Warcraft(ワールド・オブ・ウォークラフト)を所有するBlizzard(ブリザード)社は、ファンサイト用のキットを用意し、ファンサイトの構築を奨励している。多くの著作権保有者は、非営利的なフィクションには目をつぶっている。中には、ファンサイトやブログに対して、投稿用の動画や文章を用意している保有者もいる。
しかし、このバランスが、重大な問題を発生させる原因になってしまうこともある。ファンが度を越えた行動を取るようになり、実在しない倫理的な権利や法的な権利を持っていると思いこんでしまうのだ。そうなると、以前は条件を定める程度であった著作権保有者側が、態度を一変させ、すべての利用をコントロールしようとすることになる。
その結果、作家、映画の製作会社、そして、ミュージシャン達は、自分達の知的財産に関して、ファンと気まずい争いを繰り広げることになるのだ。パブリシティのことを考えても、ファンを訴えるのは不愉快だが、彼らなりに、そうせざるを得ないと感じているのだろう。
争いを避ける
ハリー・ポッターの件に代表されるような、気まずい状況を回避するには、著作権の保有者側、そして、ファンの双方が努力する必要がある。双方の協力がなければ、いずれ一線を越え、深刻な事態に発展してしまうだろう。
とりわけ、著作権の保有者側は、以下のポイントを考慮する必要がある:
- 明確なガイドラインを掲載する: ファンサイトのキットやツールは素晴らしい。しかし、ファンサイトが、著作権保護されたマテリアルを利用する際のガイドラインを策定する方が効果は高い。明確で、分かりやすく、アクセスしやすいガイドラインを用意することで、気まずい状態を避けることができるだろう。分かってくれると信じるのではなく、暗黙のルールにまで言及することを薦める。
- 想定外の利用を予め予測する: テクノロジーは常に変わり続けている。ファンが作品を想定外の方法で利用することを予め予測し、その時は、ガイドラインを作った時と同じ精神でファンにアプローチしよう。何も当てはめることができるポリシーがないからと言って、高圧的な態度を取っても効果はゼロだ。
- オープンなコミュニケーションを心がける: ファンとはオープンなコミュニケーションを取ることが重要だ。もしファンが一線を超えてしまったら、停止を求める警告書を通知する前に、実りある解決策を考えよう。全面的に敵意をむき出しにしていたら、緊張は高まる一方だ。
言うまでもなく、ファンも責任ある行動を取らなければならない。ファンサイトやブログを構築することに集中していると、著作権や他の知的財産の問題を見過ごし、後に頭を抱えることになってしまうだろう。
そのため、ファンサイトを作る際には、以下のステップを踏むことを私は強く勧める:
- 商標登録されたドメインは避ける: 商標とドメインネームの問題は非常に厄介であり、いつ何時、自分に降りかかってくるか分からない。ドメイン名を決めるときは、商標法で保護されたスローガン、名前、タイトルは避けよう。
- 掲載されているガイドラインに従う: 著作権の保有者側は、上述のガイドラインを定める必要がある。ファンは、そのガイドラインに従う必要がある。ファン・コミュニティによって、適用しているルールやガイドラインがまちまちであり、そのため、どの情報を利用することができるのかを把握し、それを順守するように心がけよう。
- 商業的な利用は避ける: たとえ商業的な利用が、公正利用を特定する際に重要視されないことを知っていても、著作権の保有者の多くは、ファンに越えては欲しくない一線として、商業的な利用を挙げている。著作権保有者からの明確な許可を得ずに、広告の掲載や商品の販売に踏み切るべきではない。
- 連絡を確立する: 成功しているファンサイトは、大抵、著作権保有者側の代表者との連絡窓口を確立し、継続的に彼らと著作権等に関する対話を行っている。このような連絡先を確保することで、著作権に対してだけではなく、他の面でもサイトを支えてもらえる可能性がある。
- コミュニティーのリーダーに従う: 連絡窓口やガイドラインが存在しない場合は、開設されてからある程度時間が経過し、成功しているファンサイトを探し出そう。著作権保護されたマテリアルの利用に関しては、彼らのルールに従い、連絡を取り、彼らの知識を分けてもらおう。法的な防衛策としては無効だが、このようなサイトは、著作権の保有者側からある程度理解を得て、運営されている可能性が高い。
やはり、互いに敬意を払うことが欠かせない。ファンは、サイトを構築する際には、著作権やその他の知的財産の問題を意識する必要があり、一方、著作権の保有者は、優れたファン・コミュニティを作るには、ある程度の侵害は大目に見る必要がある。このようなトピックは気軽に話せるような類の話題ではなく、完璧なバランスを見出すのは容易ではないが、だからと言ってこの問題の重要性を軽視するべきではない。
結論
ファンサイトは、著作権法において、興味深く、また、難解な分野の一つである。法律が曖昧であり、感情が高まる分野であり、その結果、争いは避けられなくなる。J.K.ローリング訴訟の判決から、ファンの作品に対する法的な見解をある程度は得ることが出来るかもしれないが、グレイ・ゾーンに身を隠すのではなく、憧れの存在と一緒に作品を楽しむ方がよっぽど良いはずだ。
一方、著作権の保有者側は、ファンのコミュニティを育み、ファンを励ましてもらいたい。そうすることで、自分達の作品や関連する商品をプロモートすることができるのだ。協力することで、双方が切磋琢磨するという、知的財産権においては珍しい機会が生まれるのだ。
そのため、双方が善意に基づいて行動し、協力する必要がある。善意がなければ、このような機会が訪れることはない。善意があればこそ、知的財産の問題が、善かれと思って行動していたファンによってもたされても、著作権保有者側は、敵意をむき出しにすることなく、誠実に対応するだろう。。
もし、両者がこの問題に対して誠意を持って取り組み、大人として話し合うことができれば、両者とも、すがすがしい気分で問題を解決し、大物アーティストが一線を越えたファンを法廷に引きづり出すという記事を私達が読むこともなくなるだろう。
ライター紹介: ジョナサン・ベイリーは盗用、コンテンツ盗作、そしてウェブの著作権問題をテーマに取り上げ、Plagiarism Today(プレジャリズム・トゥデイ)でブログを書いている。ジョナサンはコンテンツ盗作問題に対応するウェブマスターが正確な情報を集め、この変化の激しい分野で取り残されないようにこのブログを2005年に始めた。それ以来、コンサルティングサービスをウェブマスターや企業に提供し、彼らが現実的なコンテンツ保護戦略を考案できるように、そして効果的な著作権ポリシーを策定できるように支援している。ジョナサンは弁護士ではなく、彼が提供している情報も法的なアドバイスとして捉えるべきではない。
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1コメント
最近のニュースに「正規にお金を出して購入しているお客様がいる横で、同じ商品を無料で配布している。アップロードした自分がみんなからあがめられ、ちょっとした良い気分を味わうためや、自分のサイトに人を集めるための手段として、アニメをまきえ代わりにしている」 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/13/news100.html という言葉もあり(この記事の件は、完全に非合法な盗用の話です)、ファンサイトとそうでないサイトとは対応において一線を引くべきと感じました。
そのサイトが「商業的利用」目的であれば見てわかりやすいでしょうが、「ちょっとした良い気分」のためであるとしたら見分けるのも難しいでしょうね。
ただ、
> 商業的な利用を挙げている。著作権保有者からの明確な許可を得ずに、広告の掲載や商品の販売に踏み切るべきではない。
商品の直接販売だけでなく、「広告の掲載」も「商業的な利用」に入るという考え方は、個人的には賛成なのですが、 現在の所、世間的には「そう理解されていない」ようですので、まずはその認知から始めないとだめでしょう。
> 連絡を確立する
非合法な利用をしている人ははなから連絡しないでしょうから、(許)認可制にするのは簡単かつ強力な対策だと思います。