ブロゴスフィア全体に影響する訴訟: MGM vs Grokster

特集, 法律, 著作権 • 2007/11/16 金曜日

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死の淵からゾンビが蘇る季節、ハロウィーンは足早に去っていったが、同じような現象が法律の世界でも起きているようだ。 

2005年7月に最高裁判所が、被告であったファイル共有サービスのGrokster(グロクスター)とStreamCast(ストリームキャスト)に対して、同社のソフトウェアを利用して行われている侵害への責任を認めるような判決を下したことは多くの人の記憶に残っているだろう。 

被告にとっては致命的な打撃であったはずだ。出回っている違法ファイル共有の量を考えれば、それぞれの侵害に対する損害賠償額に関係なく、彼らのサービスの価値は失墜してしまうのだ。グロクスターの経営陣には明るい未来など全く期待できなかったのだろう。彼らはその年の11月、原告との和解案の一環として、業務を停止した。 

しかし、ストリームキャストはこの訴訟と同様に未だに活動を続けている。この訴訟はまるで死ぬ準備ができていないゾンビのようにのらりくらりと進んでいる。しかし、訴訟がゆっくりと進むにつれ、ウェブ上の著作権問題の大きな課題が浮き彫りになり、元々の最高裁の裁決と同様に、今度の裁決もウェブの行く末に大きな影響を与えることが判明した。 

背景

遡ること6年、2001年10月、MGMを筆頭に複数の映画スタジオがグロクスターとストリームキャスト(当時はKazaaの運営元として、MusicCity(ミュージックシティ)とSharman Networks(シャーマン・ネットワークス)という名前で親しまれていた)に対して訴訟を起こした。その後すぐにシャーマン・ネットワークスはバヌアツで法人化されているために除外された。 

この訴訟により、ベータマックス訴訟と言う名で知られる、Sony Corporation of America(ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ) vs Universal City Studios, Inc.(ユニバーサル・シティ・スタジオズ)との間で争われた訴訟の裁決が見直されることになる。この訴訟で、最高裁は製品の製作者と配信者は、製品が実質的に法律の範囲内で利用されていれば、ユーザーによる侵害については責任を負う必要はないと言う裁決を下していた。  

当初、MGM対グロクスターの訴訟においても、下級裁判所もベータマックス訴訟の裁決を支持しており、最高裁に持ち込まれるまでに、グロクスターは地方裁判所と控訴裁判所での争いで勝利を収めていた。グロクスターに有利な双方の裁決では、ベータマックス訴訟にも触れ、グロクスターの製品には数多くの合法的な目的が認められると言及した。      

しかし、最高裁判所は違う視点でこの訴訟を見ていた。グロクスターとストリームキャストは「著作権の侵害を後押しする目的」でサービスを提供しているため、満場一致で被告の責任を認めたのだ。この結果、製品やサービスがユーザーによる侵害に対する責任の有無を判断する、現在「誘因準則」と呼ばれる検査をが生まれた。  

しかし、この裁決がベータマックス訴訟の裁決を明らかにすることも、また、ファイル共有および助長する製品の作成を取り囲むグレイエリアを解消することもなかった。最高裁判所は被告の責任を認めたもの、どの程度責任があるのか、そして、その法的責任を緩和するために必要な行為も明示しなかった。 

これらの疑問は現在ストリームキャストが戦い、地方裁判所に戻され、これらの重要な問題に対する答えを探すための取り組みが行われている。 

現状

ストリームキャストがグロクスターを見習い、最高裁の判決に従い、白旗を揚げると言うのが大方の予想であった。財政的な損害のことを考えれば、同社の行く末には暗雲が立ち込めていたのは明らかだったからだ。 

しかし、この訴訟は地方裁判所に再び舞い戻り、未だに継続されている。ステファン・ウィルソン裁判長はこの問題のバランスを取り、できるだけ公平な形での解決を望み、四苦八苦している。10月に下された最新の裁決では、2つの重要な問題に対して結論を下していた。グロクスターとストリームキャストが著作権の保有者に対して取り返しのつかない損害を与えたかどうかと言うのが1つ目の問題で、ストリームキャストに対して、同社の業務を制限するために、どのような類の差し止め命令を下すのかと言うのが2つ目の問題である。
     
1つ目の問題では、ウィルソン判事はストリームキャストは取り返しのつかない損害を与えたと見なした。ストリームキャストが法廷損害を支払うことは不可能であり、配信されると永遠に著作権保有者が管理することができなくなってしまう、ファイル共有のウイルス的な性格を根拠に挙げていた。 

2つ目の問題では、ウィルソン判事はストリームキャストに対して、すべての侵害するマテリアルを阻止するよう求めることは同社にとっては死刑に等しいので、差し止め命令の中で、彼らが現段階で最も有効なフィルタリング・システムを利用するよう求めた。 

損害額を含め、それ以外の決定については今後下されることになるだろう。 

問題点

この2つの問題に対して、地方裁判所の最新の裁決で、回復不能な損害およびフィルタリングの強化という答えが出されている。 

回復不能な損害あるいは被害に関する問題は非常に重要である。なぜならこのような損害を証明する能力は、勝ち得る損害賠償額を引き上げるだけでなく、仮差し止め命令を発令させることにもつながり、その結果訴訟合戦の早い段階で侵害を食い止めることができるようになるからだ。要するに、回復不能な損害を証明する能力が著作権訴訟を優勢に進め、収益を増やす鍵になるのだ。 

かつて、著作権の保有者は、その権利の性質上、IPの保有者のように、難なく回復不能な損害を証明することができたが、ここ数年、法廷は少しハードルを上げ始めている。それでも今回の訴訟では、少なくとも地方裁判所の裁判長によれば、損害を証明することができたのだ。その結果、今回の判決は、インターネットを利用したすべてのサービス、とりわけ「完全なるコピー製品」を配信するサービスに大きな影響を与える可能性をはらんでいる。  

次に問題になるのが、どのような類の差し止め命令をストリームキャストに対して求めるかと言うことだ。現段階までの事実を考慮すると、今回の差し止め命令はストリームキャストに有利なものだと言える。なぜならストリームキャストは引き続き業務を続けることが可能であり、製品の合法的な利用も承認されたからだ。   

ここで問題となるのが、差し止め命令の内容に関係なく、ストリームキャストは現実的なビジネスモデルを打ち出すことが出来るのか否かと言うことだ。現状の差し止め命令では業務を遂行することができるのかもしれないが、この判決に対して原告が上訴する可能性は高い。この問題は、侵害している作品を削除するためにフィルタリング技術を採用している、YouTube(ユーチューブ)等のサービスにも大きな影響を与えるだろう。 

最後に、損害に関する問題の存在を忘れてはいけない。P2Pが著作権侵害を誘因するかどうかについてはあまり調査されていない。原告に支払われるべき金額を決めるのは非常に難しいが、避けては通れない。もし損害の程度が低ければ、厳重に注意を払いつつ、他社がこの分野に進出する足掛かりになり、もし損害が大きいと判断されれば、現在業務を行っている幾つかの企業が廃業に追い込まれてしまうことになる。

こういった損害額は、著作権が保護された作品を取り扱うサイトに大きな影響を与える。その中には、動画共有サイトは勿論のこと、ウィキの複数のウェブページ、さらに、ユーザーの参加する度合いによっては、ブログまでもが含まれる可能性がある。ウェブ全体がP2P構造の上で活動しているため、グロクスターに下された裁決がファイル共有の枠を超えて適用されることは明白である。 

裁決を左右するポイント

この訴訟は、裁決を左右するポイントを特定するのが困難な新しい領域で進められている。包括的な問題に対しては、不満は残るものの、最高裁で結論が下されており、残るは細かい部分のみとなっている。これらの詳細な問題も包括的な問題と同様に重要であり、些細な問題によって左右される可能性がある。 

しかし、とても大きな問題であり、法廷が熟考しなければならない事柄が残されている。それは、ストリームキャストが同社が誘発した侵害に対して、どの程度責任があるかと言うことだ。最高裁の裁決によると、確かに法的に責任があるとされているが、責任の程度は未だ明言されていない。どんな損害額がはじき出されるにせよ、ストリームキャストが操業停止に追い込まれる可能性は高い。それでも、法廷はストリームキャストの責任の度合いとユーザーの責任の度合いを確定しなければならない。  

これはとても難問であり、その他の法廷でユーザーに対する訴訟が争われている場合は尚更だ。しかし、正しいバランスを見出すことで、その他の問題を解決する鍵になるのだ。

今後の展開

この訴訟の展開を予測するのは難しい。通常、最高裁の前に2度も勝利を収めていれば、最高裁でも勝訴を得る確率は非常に高くなる。しかし、今回、最高裁は違う結論を見出したのだ。  

今回の一連の訴訟でも依然として変わらないことがある。それは、上訴の多さと遅延だ。地方裁判所レベルで下されたすべての裁決に対して必ず1度は上訴が求められ、つい先日の判決に対しても上訴が要求される運びになりそうだ。この訴訟に関してまだまだ議論されるべき事柄が山積している証拠である。  

この訴訟の特徴を考慮すると、この訴訟はダラダラと長引くことが予想され、最終的にストリームキャストが撤退するか、和解に応じることで決着するだろう。しかし、そこまでたどり着くにはまだまだ時間がかかり、最終的に決着するまで、上級裁判所から細部に関する裁決が2~3回下されることになるだろう。 

今回の訴訟でも、上級裁判所が下級裁判所の裁決を変更する際に、難問に対して明確な回答を示すとは思えない。良いか悪いかは別として、地方裁判所の裁決を受け入れれば、良しとするべきだろう。 

地方裁判所の裁決を考慮すると、この裁決が支持される可能性は非常に高い。 

結論

ストリームキャストがここまで粘っている理由を理解している人は誰もいないだろう。彼らは少なくとも数回は和解のオファーを受けているはずであり、数年前にこの訴訟を終えることができたはずだ。しかし、最高裁の裁決が下ってから2年以上が経過するが、彼らは未だに戦っているのだ。 

この訴訟の関係者は、それぞれの行く末に有利となるような判決を得るため、徹底的に戦うことを望んでいるようだ。この領域の不透明な要素を明確にすることを望み、そのために努力しているのだ。 

結論は意外に現在とほとんど変わらない可能性もある。この訴訟の経緯を鑑みると、問題に対してあまり明確な答えを得ることができるとは考えにくい。現段階では、グロクスターの訴訟は、問題をさらに不明確にしているだけであり、今後下る決定が、最高裁の裁決がもたらした損害を多少なりとも緩和することを祈るのが精一杯である。 

ライター紹介: ジョナサン・ベイリーは盗用、コンテンツ盗作、そしてウェブの著作権問題をテーマに取り上げ、Plagiarism Today(プレジャリズム・トゥデイ)でブログを書いている。ジョナサンはコンテンツ盗作問題に対応するウェブマスターが正確な情報を集め、この変化の激しい分野で取り残されないようにこのブログを2005年に始めた。それ以来、コンサルティングサービスをウェブマスターや企業に提供し、彼らが現実的なコンテンツ保護戦略を考案できるように、そして効果的な著作権ポリシーを策定できるように支援している。ジョナサンは弁護士ではなく、彼が提供している情報も法的なアドバイスとして捉えるべきではない。

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