Wednesday, 19 November, 2008

ブロゴスフィア全体に影響する訴訟: RIAA vs ファイル共有サービスのユーザー

10月 31日 at 1:30 pm by ジョナサン ベイリー -

RIAA(全米レコード工業会)よりも冷やかな視線が注がれている原告は存在しないだろう。数億ドル規模のレコード産業が、立場の弱い母親達や子供達を著作権の侵害を理由にして、訴訟を起こしているのだ。陪審員の涙を誘うことはまず無理だろう。 

しかしながら、RIAAキャンペーンと呼ばれるこの不人気な活動が続く中、この問題が実はブロガーやウェブ上で活動する小規模な著作権保有者に直接影響を与える著作権問題にも関係していることは、あまり知られていない。 

つまり、RIAA、その戦略、あるいはファイル共有についてどのような意見を持とうが、この一連の訴訟が注目するべき訴訟である事実に変わりはないと言うことだ。法廷がこの問題に見出すバランスこそが、力の大小は関係なく、ウェブ上の自分達の作品を守る方法に直接影響を与える可能性があるのだ。

背景

2000年7月、RIAAはファイル共有の訴訟で勝利を収め、ファイル共有サービスを展開するNapster(ナップスター)に対して差し止め命令を勝ち取った。その結果、おなじみのファイル共有サービスが姿を消すことになった。 

しかし、これでRIAAのファイル共有戦争が終わりを告げたわけではなかった。むしろ始まりを告げたというべきだろう。新たなファイル共有ネットワークが次々に誕生したのだ。これらのネットワークはより分散化し、たった一度の法的な戦略に対する抵抗力も増長していった。中には、訴訟に持ち込むのが(不可能ではないにしても)遙かに難しく、ISPからの協力を得ることも困難な外国でサービスを開始する者も現れるようになった。  

2005年に裁決が下されたGrokster(グロクスター)等、これらのネットワークの構築に携わった複数の企業に対する訴訟も、RIAAが著作権を持つ音楽のダウンロードを止めさせることはできなかった。セントラルサーバーがなくなり、これらの技術を開発した企業が操業を停止しても、ファイル共有が滞ることはなかった。
  
そして2003年、RIAAは戦略を変更する決断を下し、米国内で261人のファイルを共有した人物に対して訴訟を起こした。4年後、この数は増え続け、20,000人を超える勢いである。毎週人数は増えていくようだ。  

被告の大多数が法律バトルを避けるために和解に応じている。しかし、数人は首を横に振った。Capitol Records(キャピトル・レコード)対ジャミー・トーマスの訴訟がその先陣を切り、今月初め、トーマスに22万2,000ドルの賠償金を支払いを求める評決が下った。

トーマスはこの評決に対して上訴するようだが、評決に対してではなく、賠償金の金額に対して、上訴するようだ。 

しかし、最初の訴訟が終焉を迎えたものの、見出された答えよりも、残された疑問の方が多くなってしまった。 

現状

トーマスの訴訟は多くの人々の印象に残っている。トーマスはKazaa(カザー)を使っていたため、ユーザーネームとIPアドレスが特定されてしまった。彼女は同じユーザーネームを他の場所でも使っていたため、IPは比較的静的であり、他の誰かが彼女のマシンを利用していた可能性は皆無だったため、RIAAは臆することなく訴えたのだ。 

しかし、さらに難しい訴訟が待ち構えている。侵害している人物の特定が難しいだけでなく、敵対的な裁判官が訴訟を裁く可能性があり、ハードルは高くなるはずだ。例えば、トーマスの訴訟では、RIAAはトーマスがダウンロード用にファイルを利用できるようにしていたことを証明するだけで、誰かがコピーしていたかどうかは証明する必要はなかった。多くの裁判官がダウンロードできるように作業を行う問題については同意しているものの、これに反対する裁判官も存在するのだ。  

トーマスの訴訟でRIAAが確たる勝利を収めたことは言うまでもないが、戦いはまだ始まったばかりであり、長く、大変な道のりが待ち受けている。 

問題点

盗用やウェブ上のコンテンツ盗作訴訟の大部分が、コンテンツの削除を軸に展開されている。しかし、侵害が悪質な場合、あるいは損害の度合が著しく大きな場合、民事上の損害賠償を請求することになるが、現在RIAAがその訴訟において直面している課題の多くが、自分達の作品を保護する小規模な著作権保有者にも迫っていることを忘れてはいけいない。 

一つ目の問題は、侵害するマテリアルを投稿した個人を特定すること、そして、該当者が正しい人物だと言うことを法廷に保証するための条件を特定することだ。IPアドレスは妥当だろうか?オープンなWIFI接続が利用されている場合はどうだろうか?濫用の事実を把握していないにも関わらず、接続を実行した人物を犯人と決めつけてしまっても問題ないのだろうか?著作権の保有者、プライバシー、そしてオープンなアクセスを全て両立させることは難しい。 

二つ目の問題は、「利用できるようにすること」が侵害にあたるかどうかを判断することだ。もし私がウェブサイトに作品を投稿した場合、それ自体が侵害にあたるのだろうか、あるいはビジターがいたことを証明しなければならないのだろうか?そのような侵害はサーバーのログを見れば証明することができるが、これは利用することが不可能であったり、取得するのが難しいこともある。著作権の保有者側から見れば、利用できるようにすること自体を侵害として取り扱ってもらいたいはずだ。 

損害額が最後の問題である。ウェブ上に投稿されている作品のほとんどがUnited States Copyright Office(米国著作権局)に未登録であり、損害賠償を求める要件を満たしていないものの、登録し、損害賠償に頼る場合、訴訟を起こすためには財政的に恵まれている必要がある。なぜなら訴訟の費用は、大部分の訴訟から得られる賠償金を遙かに上回るからだ。 

トーマスに下った評決で求められた損害賠償の金額は違法に高額だとされており、著作権の侵害に対する損害賠償の金額に関して、新しい規則が設けられるだろう。現在、意図的な侵害の場合は最低750ドルとされている。一般的なレベルの著作権保有者は、訴訟を起こすのに充分な資金を持ち合わせていないのが現状である。 

また、RIAAが訴訟に敗れた場合、多くのファイル共有者が大喜びする一方で、著作権の保有者は損する可能性が高く、訴訟に対して奥手なアーティストが、スパマー、スクレイパー、そしてその他の盗用者から自分の作品を守る力がそぎ落とされてしまうことにもなりかねない。 

裁決を左右するポイント

解釈。これに尽きる。

これらの訴訟は裁判官が時代遅れの著作権法をどのように現代のデジタルエイジに当てはめるかにかかっている。 

公開はいつ始まるのだろうか?ウェブ上の展示とパフォーマンスを構成する要素は何だろうか?インターネットのコネクションを使っているのが他人の場合、どのような責任が課されるのか?法廷はこれらの問題に対する答えを出す必要があり、これまで下された判決にはばらつきが見られる。  

恐らく、最終的な決断が下るまでに、少なくとも数回、最高栽の裁決が下ることになるはずだ。不幸にもこのように裁決には時間がかかり、グロクスターの件を見れば分かるように、法廷が必ずしも目前の問題に対して回答を導きだすとは限らないのだ。  

今後の展開

これらの問題が山積しているため、RIAAが今後の展開を予想するのは難しい。2000年、彼らはファンを訴えないことを態度で示したが、実際には現在まで2万人のファンを訴えている。 

RIAAはこれまで何度か挫折を味わい、実際に数回訴訟をあきらめ、敗れたこともある。しかしながら、彼らの勝訴/敗訴の割合は素晴らしい。数千回訴訟を起こして、数回しか負けていないのだ。  

この勝利の流れは、しばらくは続きそうだ。悪者扱いされ、非難されても、RIAAの弁護士は負けを知らない。このキャンペーンは法廷で終わるのはではなく、消耗戦に発展する可能性が高い。   

RIAAによると、彼らは訴訟に大金を費やしてはいるものの、統計によると、ファイル共有の勢いが弱まっている兆しは見られないようだ。  

RIAAはここ数年現実を直視しないように努めてきたが、彼らでさえ、いずれは現実に向き合い、このキャンペーンの効果は乏しく、逆にリスナーを遠ざけてしまっていることに気づくだろう。 

結論

もし、法的には正しいものの、ビジネスにとってはマイナスになる訴訟が存在するとすれば、まさにこの件が当てはまるだろう。ファイルの共有が違法だからと言って、そして訴訟を起こすことができるからと言って、名案だとは限らないのだ。  

しかし、RIAAが訴訟を連発しても、ファイル共有のペースを遅くすることすらできないが、著作権法の難しい分野にスポットライトが当てられ、裁判官はこの未解決の問題に対処する必要がでてくるはずだ。 

RIAAに同情を寄せる人は少なく、訴訟からの収益も僅かではあるが、これらの訴訟により法律の透明度が増すことで、その他のウェブユーザーは大きなメリットを享受することができるのかもしれない。 

裁判官がどのように判断を下し、どのように関係者すべてを両立させるのかが鍵になるはずだ。現在の著作権訴訟の判例を見ていくと、両立が成立するのは遠い未来になりそうだ。それでも尚、これが一番明るい希望である事実には変わりはない。 

つまり、政治家がこれらの問題に本格的に着手するまで、現在の状態が続くと言うことだ。 

ライター紹介: ジョナサン・ベイリーは盗用、コンテンツ盗作、そしてウェブの著作権問題をテーマに取り上げ、Plagiarism Today(プレジャリズム・トゥデイ)でブログを書いている。ジョナサンはコンテンツ盗作問題に対応するウェブマスターが正確な情報を集め、この変化の激しい分野で取り残されないようにこのブログを2005年に始めた。それ以来、コンサルティングサービスをウェブマスターや企業に提供し、彼らが現実的なコンテンツ保護戦略を考案できるように、そして効果的な著作権ポリシーを策定できるように支援している。ジョナサンは弁護士ではなく、彼が提供している情報も法的なアドバイスとして捉えるべきではない。

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